Creative Lab: Leica M6でフィルム比較 モノクロフィルム編

前回の記事(カラーフィルム編)の続きとなる今回、取り上げるのはモノクロフィルム。もともと単色を表すモノクローム (monochrome) という単語ですが、日本では白黒を意味する言葉として浸透しています。ちなみに英語では”Black and white”、そのままですね。

モノクロ撮影の被写体は光、そして影です。もともと写真というものは、レンズを通して入ってきた光の記録。もちろんカラー写真でも光は重要な要素で、常に光を中心に画を組み立てていきますが、色の要素をなくすことで結果的により強く光や構図を意識させられます。

そんな単なるノスタルジアだけでは魅力を語れないモノクロ写真。今回はシンプルに2種のフィルムを、そのフォトスタイルによる印象と演出の観点で比較してみたいと思います。

Cinestill BWXX
ひとつめは、カラーフィルム編でも紹介した映画撮影用フィルムから生まれたCinestillシリーズのモノクロフィルム。元になったフィルム「Kodak Double X」は、映画「マンハッタン(1979)」や「シンドラーのリスト(1993)」などで使用されています。

000021のコピー
000020

コントラストが強くハイライトの印象的なシーンを撮影すると、より良さが際立ち、影の部分がつぶれずに十分なディテールを残してくれました。とてもバランスが良く、何を撮っても画が仕上がるとっても使いやすいフィルムです。

色がないからこそ被写体の形状や質感が明確に捉えられるモノクロ写真ですが、Cinestill BWXXでは黒がしっかりと出ていながらも品良く強さを表現できました。強いメッセージを伝えたり、妥協せず本質を追求するような意思の強さを印象付けたい場合におすすめです。

BERGGER PANCRO 400
ふたつめは高級印画紙を製造・販売しているフランスの感材メーカー・BERGGER(ベルゲール)のモノクロフィルム。やわらかい雰囲気のフィルムとのことで、バキッとコントラスト強めの写真が目立つモノクロ界では貴重な存在かもしれません。

中間色の階調が豊かで、ポエティックな仕上がりに。さすが数多くの偉大な詩人を生んだフランスです。さながらヌーヴェルヴァーグを思わせるグレーの奥行きは「映画のような」とうたうCinestillよりもかえって映画のワンシーンのような写真になりました。

絵画的で繊細なフォトスタイルによって、受け取る側に考える余白を与える余韻のある空気を演出することができます。記憶の扉を開くような、ここではないどこかへ思いを馳せるような、内省的な表現とも相性が良いでしょう。

まだまだはじめたばかりのモノクロ撮影。「光と影」を被写体にする今までにない感覚とフィルムならではの表現がカラーよりも顕著に感じられ、とても良い体験になりました。プライベートではしばらくモノクロ派になりそうです。

写真や映像でブランドの世界観を表現する中で、フィルムをはじめとした様々なツールの特徴も理解し、より使いこなしていきたいと思います。

Manami / Designer

Scroll to Top