Creative lab: Graphic Elements 伝統と展開 は、
トラディショナルな民族文様やその他の意匠からインスピレーションを受け、それを再構成や展開する試みです。
第2回目のテーマは篆書体。
私は忙しくない月間は土と戯れ、器を制作しているのですが、窯を共同で運用する際、必ず個人の作品を特定するサインが必要になります。
私はそれを自らが篆刻した印章を使い、自身の作品を識別しています。
竹串などで小気味良くささっとサインするのが粋ですが、目印を均一に保てる印章は非常に便利な道具といえます。
現在、楷書と篆書体を作品によって使い分けています。
いいですねー、篆書体。お気に入りです。
みなさん、使ってますか? 篆書体。
古代文字に分類される書体の中では最も息がながいそうです。
篆書体には甲骨文字の雰囲気を残すものや、楷書にも近いものも見受けられます。
そのうえ、なんともいえない柔らかさや、印鑑に使用された時の格式も同時に味わえるので、個人的に興味のある書体です。
どっちつかずの中途半端な文字ともとれそうですが、そこがまた良いところです。
歴史的には、
篆書体である小篆は中国、秦の時代に正式な統一書体として採用されましたが、その複雑さ故、当時の人々には使いこなせず、衰退していく道をたどります。(複雑なため、使う人によって様々な派生文字を作っていったといいます)
漢字の変遷は大きくは以下のような流れです。
甲骨文字 → 金文 → 石鼓文(大篆)→ 篆書(小篆)→ 隷書 → 楷書
(徐々に整理がされて、使いやすい字体となっていきます)
一度は衰退していった篆書体ですが、唐時代の復古主義的な動きから再度脚光を浴びることとなります。さらに「篆刻」という工芸美術の1分野も作り、各時代や各国に派生文字を作り続けることとなります。
唐の時代にも私と同じように、篆書体の魅力にとりつかれた人も多くいたことでしょう。
ちなみに昨年、制作したオリジナルゴムスタンプがこちら。これも一つの展開例。
(もちろん、こちらも正確な篆書体ではありません)
さて今回の本題の展開ですが、第1回と同じく器の絵付けに展開していこうと思います。
日美さんという方に送るお皿の制作。
日々、豊かな美しさに包まれた暮しが出来るよう想像して、制作にあたります。
字の成り立ちは、
- 「日」(象形文字)太陽の形
- 「美」(会意文字)「羊」+「大」
神への献物である羊は美しいもの。大きいものは善いもの。
(羊の全形を現す象形文字という説もあります)
美という文字、篆書体のサンプルを調べると、装飾品で着飾った人のようなもの、バルタン星人のようなものもあり、なかなか愛嬌のある形をしています。
さりげなく生活にとけ込むように、やさしく、やさしく。
字体は篆書体の雰囲気を少し残し、識字でき、飽きのこないようシンプルに。
全体的には、お皿の円よりもっと大きく拡がっていくように。
文字の方が、お皿を飛び出していくように。
いかがでしょうか?
持ち主になっていただける方が、気に入ってくれますように。
Keiju Sasaki / Implementation Designer